(写真:笹浪淳史)

北海道新幹線札幌延伸に向けての動き

JR北海道は、北海道新幹線開業時に経営分離する区間を、函館~小樽間と表明しており、新幹線着工の動きが具体化するにつれて、町内でも鉄路が無くなることを危惧する声が高まりました。2009年には北後志5ケ町村の町村長、議会議長がJR北海道に対し鉄路の経営継続を要望、道にも支援を求めました。またJR函館本線の存続を求める住民団体が結成され、全町的な署名活動が展開されました。

余市町も、「経営分離には同意できない」旨の方針を議会や町民に示していました。

こうした中、2011年秋ごろより、北海道新幹線(新函館~札幌間)着工認可に向けた動きが急速に活発化します。

余市町に迫られた経営分離への「同意」

北海道新幹線の札幌延伸については、余市町の同意がなければ認可されないとして、関係幹部の余市町への来庁が相次ぎます。こうした要請について、2011年11月末には嶋余市町長(当時)は、余市~小樽間については鉄道として存続をさせるだけの利用者が十分にあることから「現時点ではいま直ちに経営分離に同意できる状況にはない」との立場を表明。

その後、12月上旬に、JR北海道の小池明夫社長(当時)からは、並行在来線が第三セクター鉄道となる場合には、人材派遣なども含めて鉄道事業者として最大限の協力をする旨、JR北海道の意向が表明されます。

こうした中で、高井北海道副知事(当時)が余市町に来庁し新幹線札幌延伸への協力を要請、12月16日を期限として判断を求められる状況に。

さらに、12月13日には高橋北海道知事(当時)からも町長に対して、北海道庁の立場としても経営分離後の地域交通の確保に向けて国やJR北海道に協力の要請を行うこと、地域振興について検討の場を設けることについての意向が表明されました。

回答期限が迫る中、沿線自治体が次々に同意を表明。

外堀が埋められた状況の中で、いろいろと支援しますのでなんとか経営分離に同意してくれという度重なる要請に、嶋町長は「苦渋の選択」として経営分離への同意を決断させられることになりました。

2022.6.17. 余市駅を存続する会

整備新幹線と並行在来線

新幹線を新たに作ろうとした場合には、沿線の自治体は、新幹線に並行している在来線のJRからの経営分離に同意をしなければ、新幹線の着工が出来ない仕組みになっています。

これがいわゆる整備新幹線というスキームです。

並行在来線のJRからの経営分離については、鉄道路線が廃止になるということを意味している訳ではありません。九州新幹線や北陸新幹線の並行在来線など道外のケースではそのほとんどがJRから経営が移管された第三セクター鉄道により鉄道路線が存続しています。