余市ー小樽間の第三セクター化の試算については、各項目の経費について過大に見積もられている部分が多く見受けられました。
初期投資額についての問題点
道庁の試算では初期投資額の総額を45億4000万円と示していますが、以下の点について疑問の余地があります。
●JR譲渡資産の4億8000万円について
余市―小樽間の鉄道施設については、国鉄分割民営化の際に旧国鉄からJR北海道に対してほぼ無償で譲渡されたものです。仮に旧国鉄からJR北海道に対して譲渡された際に一定の資産価値があったとしても、この鉄道施設については1987(昭和62)年の国鉄分割民営化からすでに35年が経過し、減価償却済の資産も多く含まれていることから、本来であれば無償譲渡を前提とすることが然るべきです。
●車両の14億1000万円について
1両2億3000万円のH100形の新車6両での金額で試算がされていますが、現在、余市ー小樽間で運行されているH100形については、JR北海道から同区間の経営分離の時点ですでに10年以上が経過することとなり、これらの車両を第三セクター会社が引き継ぐことを想定した場合には、想定される譲渡価格としては常軌を逸した高価格で設定されていると言わざるを得ません。
●車両検査施設の4億5000万円について
余市駅構内には、保線用の車庫があります。この車庫内には線路が2線あり、いずれも車両の床下検査用のピットを有していることから、建物の一部補修で十分に使用が可能であるものです。こうしたことから、車両検査施設を全く新しく建設する必要はなく、この項目についても大幅な減額が可能です。
●信号設備の4億円について
JR留萌本線の石狩沼田駅の信号折り返し設備の費用について、各報道機関から8000万円と報道されていることから、こちたについても経費を水増ししていると言わざるを得ません。
単年度収支(2030年度)についての問題点
北海道庁では余市―小樽間の2030年度の単年度収支を以下のように試算しています。
運輸収入 2億3400万円
営業経費 7億2000万円
営業損失 ▲4億8600万円
北海道庁が試算する金額については、営業損失4億8600万円の86%にあたる金額が人件費で占められおり、必要とされる職員数が過剰と言わざるを得ません。
●人件費の4億2000万円の内訳
平均年収を500万円とした場合、必要とされる社員数は80名となりますが、余市―小樽間19.9kmと同程度の第三セクター鉄道の若桜鉄道線(鳥取県)19.2kmが17名の社員数で運行していることを考えるとこちらも費用が過大に見積もられていることは明らかです。
当会作成の列車ダイヤ案
※新しい情報が判明次第、順次、情報を更新予定。2022.12.14.